印刷業界は今後どうなる?パート②市場変化、課題、事業の多角化事例を徹底解説

印刷

印刷業界の市場規模は1990年代にピークを迎えるまで拡大し続け、現在は縮小しています。インターネットの普及により紙からWebへとデジタルシフトが進んでいますが、印刷技術は情報伝達を行う上で欠かせません。

縮小する市場の中で、あらゆる企業が存続のためさまざまな工夫を凝らしています。
本記事では印刷業界の市場と課題、生き残りをかけた各企業が行う事業の多角化をご紹介します。

印刷業界の課題と展望については、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
https://www.akebono-print.co.jp/2021/11/19/printing-industry/

印刷業界の4つのカテゴリー

印刷業界という言葉を聞いてどのようなシーンをイメージしますか。新聞、ポスター、商品パッケージなどが印刷されるシーンが頭に浮かんだのではないでしょうか。

印刷業界は大きく4つに分類されます。

  • ・商業印刷
  • ・出版印刷
  • ・事務用品印刷
  • ・包装印刷

それぞれの印刷カテゴリーについてご紹介します。

商業印刷

商業印刷とは一般企業や団体が事業を行う際に必要な印刷物のカテゴリーです。
チラシ、カタログなどの宣伝用印刷物と社内報、マニュアルなどの業務用印刷物に分けられます。

出版印刷

出版印刷とは新聞紙、雑誌、書籍などの出版社・新聞社が発行する印刷物のカテゴリーです。
週刊誌や月刊誌などの定期出版と、単行本や教科書などの不定期出版に分けられます。

事務用品印刷

事務用品印刷とは一般企業や団体が事務を行う際に必要な印刷物のカテゴリーです。
ハガキ、名刺、ノートなどの事務用品、複写式の伝票類、請求書、領収書などの事務用伝票、ミシン目やマージナルパンチの加工がされているビジネスフォームに分けられます。

包装印刷

包装印刷とは包装紙や段ボールなど包装物に必要な印刷カテゴリーです。
商品を梱包する箱、パッケージ、包装紙などの「紙器・包装用」と、プラスチックフィルムのような薄く柔軟性のある素材を利用したラベルやフィルムなどの「軟包装用」に分けられます。

印刷業界の市場変化

これまで印刷業界はどのような市場変化を辿ってきたのでしょうか。
結論として、印刷業界は1990年代のピークを迎えたあと、現在は市場規模が縮小しています。これまでの印刷業界の市場推移と現状についてご紹介します。

参照元:株式会社矢野経済研究所「一般印刷市場に関する調査を実施(2020年)」

株式会社矢野経済研究所が2020年に行った「一般印刷市場に関する調査」によると、2013年度以降、印刷市場は右肩下がりとなっていることがわかります。

2013年度から2019年度までは毎年1%程度の減少が続いていましたが、2020年度、2021年度は新型コロナウイルスの影響を受け大幅に市場が縮小しています。

戦後からの印刷業界の市場変化

参照元:一般社団法人日本印刷産業連合会「年次動向」

こちらの画像は一般社団法人日本印刷産業連合会が経済産業省の「2020年工業統計調査 産業編」を参照し作成した印刷業界の年次動向です。

印刷業界は1951年から1991年までは市場規模の拡大、1992年から1998年までは停滞、1999年以降は市場規模の縮小という変遷を辿っています。

市場規模は直近数年で縮小しているのではなく、1999年から20年以上も続いていることがわかります。

印刷業界の用途別市場規模

参照元:山田コンサルティンググループ株式会社「経営ナレッジ」

こちらの画像は山田コンサルティンググループ株式会社が、経済産業省「生産動態統計年報」を参照して作成した「印刷業界 用途別生産金額シェア」です。

出版印刷の生産金額は2006年から2018年にかけて約半分へと大幅に減少しています。商業印刷、事務用印刷、包装印刷の生産金額は2006年から2018年にかけて同程度もしくは微増となっています。

印刷業界の市場縮小は出版印刷の需要減少によるものだと紐解くことができます。なぜ出版印刷の需要が減少しているのでしょうか。それはインターネットの普及により、出版物の需要が減ったからです。

参照元:出版科学研究所「日本の出版販売額」

公益社団法人全国出版協会による「出版物の推定販売金額」によると、雑誌、書籍の販売金額は毎年減少傾向にありますが、電子書籍は2014年以降右肩上がりとなっています。

スマートフォンの普及により電子書籍が利用されることも出版印刷の需要が減少している理由の一つと言えます。

印刷業界の企業シェア率

参照元:業界動向SEARCH.COM「印刷業界の動向、ランキングなど(2022年版)」

画像は株式会社デジタル&ワークスが運営する「業界動向サーチ 印刷業界シェア&ランキング(2021年版)」です。

印刷業界は売上高の上位2社が77%の市場シェアを占める寡占状態であることがわかります。
上位10社の中で売上高が増加している企業はありません。売上高を維持している企業は5社で、その内4社はトップ企業です。5位以降の企業のほとんどが売上高を減少させています。

市場の縮小と大企業の寡占化により、印刷業は中小企業にとって厳しい市場と言えるでしょう。

印刷業界の課題

印刷業界が直面している課題は大きく3つあります。

  • ・紙媒体の減少とデジタル化への移行
  • ・環境問題への対応
  • ・印刷業以外の特定分野への注力が求められる

電子書籍をはじめとするペーパーレス化の推進により紙媒体の需要は減少しています。
近年は環境問題への意識の高まりから、よく耳にするのがSDGs(Sustainable Development Goals)やカーボンニュートラルという言葉です。

印刷業界でも環境問題にどのように対処していくかという意思決定が求められます。業界の市場規模の縮小に伴い、中小企業は印刷業以外の分野に注力することで生き残る戦略を取る必要があります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください
https://www.akebono-print.co.jp/2021/11/19/printing-industry/

印刷業界の事業多角化の事例

印刷業界は市場規模が縮小しているため、印刷事業のみで生き残るのは難しくなりつつあります。
印刷業界の売上高ランキングの上位2社である凸版印刷、大日本印刷、そして地方中小企業である当社が行う事業の多角化の事例をご紹介します。

ぜひ会社事業の方向性を定める際の参考にしてください。

凸版印刷株式会社

参照元:deallab「印刷業界の世界市場シェアの分析」

凸版印刷株式会社は1900年に創業した国内印刷業界の売上高トップの企業です。ディールラボによると世界の印刷業界世界市場シェアでも1位を誇る世界的な印刷会社です。

商業印刷・出版印刷はもちろん、印刷テクノロジーを用いて以下のようなさまざまな新事業を展開しています。

  • ・XR技術
  • ・デジタルマーケティング
  • ・地方創生
  • ・エレクトロニクス

XR技術
XR技術を活用して史跡の昔の姿を見ることができる「ストリートミュージアム®」、遠く離れた場所にいる相手と同じ空間にいるかのような体験ができる「TeleAttend™」を展開しています。

デジタルマーケティング
会話から利用者の感情を汲み取るAIチャットボット「BotFriends」を展開しています。
例えば、「結婚したので、必要な手続きを教えて」という利用者の文章から「喜び」の感情を汲み取り、「おめでとう!」という言葉を添えて回答するそうです。

地方創生
法人向け音声翻訳アプリ「VoiceBiz®」を展開しています。
訪日外国人や在留外国人とスマートフォンアプリを介してコミュニケーションができます。

エレクトロニクス
印刷で培った繊細な加工技術でディスプレイ関連製品、半導体関連製品を製造しています。例えば大型液晶テレビやスマートフォン画面のカラーフィルタや、カシオ計算機との技術提携によって誕生した高画質、省電力の液晶ディスプレイなどがあります。

大日本印刷株式会社

大日本印刷株式会社は1876年に創業した国内印刷業界の売上高2位の企業です。
世界の印刷業界世界市場シェアでは、凸版印刷株式会社に次ぐ2番目を誇る世界的な印刷会社です。

大日本印刷株式会社は以下のようなさまざまな新事業を展開しています。

  • ・顔写真・IDソリューション
  • ・決済・EC
  • ・モビリティ

顔写真・IDソリューション
全国に7,400台展開する「証明写真機Ki-Re-i」、ユーザーがスマートフォンで撮影した顔写真をサーバーで一元管理できる「Photo Entry」を展開しています。

決済
NFC対応のスマートフォンをATMにかざすと、簡単に入出金ができる「DNPスマートデバイス向けATM取引認証サービス」を開発しました。
NFCとはNear Field Communicationの略称で 近距離無線通信技術の国際規格です。
実際に2018年からイオン銀行でサービスが開始されています。

モビリティ
日産自動車株式会社やソフトバンク株式会社などを含む4社と、車での移動中にWeb会議ができる「移動会議室」の実証実験を行っています。期間は2022年2月17日(木)〜9月30日(金)で1回あたり20,000円から利用できます。
2021年6月28日〜9月24日でも同様の実証実験を行っており、半数以上の利用者が「移動会議室」の利用料金も支払う意向があることが確認できました。

株式会社あけぼの印刷社

当社は1946年に創業し今年で75年目を迎える茨城県の印刷会社です。
近年では、印刷業に加えWebの技術も取り入れながら「情報伝達業のプロフェッショナル」として事業展開をしています。

当社は以下のようなさまざまな新事業を展開しています。

  • ・物流代行
  • ・Webマーケティング
  • ・シェアオフィス

物流代行
印刷だけでなく制作物の梱包、発送代行、在庫管理まで対応しています。
複数の店舗で事業展開されている企業様に関しては、オリジナルの出荷指示書やデータベースを作成し、印刷物の扱いについての細かなご要望にお応えしております。
例えばご要望に応じて必要な分だけ追加の印刷もできますので、在庫切れのリスクもございません。

当社が行う物流代行についてはこちらの記事をご覧ください。
https://www.akebono-print.co.jp/service/logistics/

マーケティング支援
当社は創業75年の印刷技術に加え、マーケティング・デザインのプロフェッショナルが多数在籍しています。アナログマーケティングとデジタルマーケティングを活用し総合的なマーケティング支援を行っています。

  • ・ポスティング
  • ・Web広告運用
  • ・ホームページ作成

上記のような手段で、お客様の目的にあわせたマーケティングプランをご提案いたします。
当社が行うマーケティング支援についてはこちらの記事をご覧ください。
https://www.akebono-print.co.jp/service/marketing/

シェアオフィス
2022年の夏にはシェアオフィスを展開する予定です。入居費のビジネスモデルではなく、「自分たちが提供できない事業を個人事業主の方とパートナーになることで解決する」というモデルです。
AR、VR、動画を扱える人など、あけぼの印刷社に足りない部分をパートナーに補ってもらいます。

▼関連「サービス一覧」
https://www.akebono-print.co.jp/service/

▼関連「【社長インタビュー】「2022年は変革の年。ここで変わらなければ未来はない」あけぼの印刷社が目指す未来とは。」
https://www.akebono-print.co.jp/2022/01/05/interview-with-the-president/

まとめ:印刷業界は時代のニーズにあわせた事業の多角化が求められている

日常生活と印刷は切っても切り離せない関係にあります。しかしインターネットやスマートフォンの普及により今後も紙媒体の需要は減少すると予想されます。
印刷業が消費者に情報を伝達し続けるためには、時代のニーズを捉えた事業の多角化が求められます。

あけぼの印刷社は紙の印刷だけでなくデジタルも連動させ、お客様の「伝えたいをカタチに」します。
印刷、物流、マーケティングでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。


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