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「応募者が少なく優秀な人材を採用できない」「入社後に会社とのミスマッチが発生し早期退職する人が多い」といったことに悩む人事担当の方もいるのではないでしょうか。働き方の多様化や労働力不足など、様々な要因で採用活動は難しくなっており、従来の方法では優秀な人材を採用することはできません。
今回は、マーケティング支援実績が豊富な当社が、採用活動をマーケティング視点から考える「採用マーケティング」について解説します。
もくじ
採用マーケティングとは
採用マーケティングとは、「マーケティングの考え方を反映させた採用活動」のことです。
有名な経営学者のピーター・ドラッカーはマーケティングについて、「マーケティングの理想は販売を不必要にすることだ」と発言しています。つまり、採用マーケティングは、求人に応募した人を採用することを目的とする従来の採用方法とは異なり、自社を認知していない潜在的な層にも適切なメッセージを訴求することで自然と応募者が集まる仕組みを作ることと言えるでしょう。
採用マーケティングにおけるファネルとチャネル
採用マーケティングにおけるファネルの各段階で、よく使用されるチャネルをご紹介します。
ファネルとは漏斗を意味する言葉で、マーケティングでは消費者の購買プロセスを図式化したものです。採用に当てはめると、認知・興味関心・応募・選考内定・入社というプロセスになります。
マーケティングにおいてチャネルとは消費者に対するアプローチ方法のことを指し、採用においてはSNS・求人媒体・イベントなどが挙げられます。ファネルの各段階で適切なチャネルを選ぶことで、効率よく理想的な人材を採用できます。
採用マーケティングが注目される背景
スマートフォンや電車の中などで、求人広告を目にすることが増えていませんか。これからも採用マーケティングへの注目が高まっていることがわかります。
では、採用マーケティングが注目されている理由はなんでしょうか。それは採用自体が難しくなることでかかる時間や費用が増えるだけでなく、採用しても企業と求職者のミスマッチによる早期退職が増えているからです。そんな採用市場の現状から、良い人材を効率よく獲得することが求められています。
採用マーケティングが注目される3つの背景をご紹介します。
求職者に有利な採用市場
日本の採用市場は以下の2つの特徴によって求職者が有利になっています。
- ・労働人口が減少する
- ・会社の求人数よりも大卒の求職者が少ない
求職者より求人が多いと採用が難しくなるため、採用側は求職者に働きたいと思ってもらう工夫をする必要があります。
労働人口が減少する
パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計 2030」によると、2030年には7,073万人の求人に対し6,429万人の求職者しか見込めず、644万人の人手不足になるといわれています。
会社の求人数よりも大卒の求職者が少ない
大卒者の求人倍率をご存知ですか?リクルートワークス研究所の「2023年3月卒業予定の大卒求人倍率(大学院卒含む)に関する調査」によると、大卒求人倍率は1.58倍となっています。求人倍率とは求職者1人あたりどれくらいの求人があるのかを示す数値です。求人が求職者より多い場合、求人倍率は1倍より大きくなります。
2023年3月大学卒業予定者では全国の民間企業の求人総数70.7万人、民間企業への就職希望者数は44.9万人となり、求職者に対して25.8万人分の求人が余っている計算になります。
働き方の多様化
働き方改革やコロナ禍など環境の変化により、仕事への価値観が多様化していると感じる方もいるのではないでしょうか。「仕事に熱中したい」「仕事と家庭を両立したい」「海外からリモートワークをしたい」など、さまざまな価値観に合わせて適切な訴求を行わなければ、求職者に魅力を課kン字てもらうことができません。また、求職者の価値観を知らずに採用してしまうと、入社後のミスマッチにつながります。
リモートワークについては、こちらの記事を参考にしてください。
関連:【茨城・地方企業の人事戦略】優秀な人材を採用するための「リモートワーク」
採用方法の多様化
Webマーケティングの普及や採用に関する新サービスの誕生により採用方法は多様化しています。
デジタル広告・SNSの活用、社員紹介によるリファラル採用、インターンシップ制度などさまざまな方法を活用することで従来の採用ではリーチできなかった層にアプローチすることできます。
アプローチできる人の中から採用したい人材を獲得するには、戦略的な採用活動が必要です。
採用マーケティングのメリット
採用マーケティングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。採用マーケティングを導入すると、採用数の増加、採用の質の向上、コスト削減など多くの効果が期待できます。
新しい手法を導入するのは面倒くさい、コストがかかるといったイメージがあるかもしれませんが、結果的に得られるリターンは導入のコストよりもはるかに大きいでしょう。
以下で、採用マーケティングのメリットを解説します。
採用ターゲットからの応募数が増加する
採用マーケティングは求人に応募した人を採用することを目的とする従来の採用とは大きく異なります。自社のことを全く知らない人や自社にまだ興味関心がない人などの潜在的な層にも適切なチャネルとメッセージでアプローチを行います。
結果的に従来の方法ではアプローチできなかった潜在的な層からの応募も見込めます。
ミスマッチが減少し早期退職を防げる
コストをかけて採用した社員の早期退職に悩んでいませんか。
採用マーケティングでは自社が求める人材のペルソナを策定するフローを設けることで、自社に適した応募者を獲得することができます。
結果的に入社後のミスマッチが減少し、社員の早期退職を防ぐことにつながります。
採用コストの削減
採用したい人材に最適な媒体で響きやすい訴求を行うことで、効率よく採用を進めることができます。
最初から自社とマッチした求職者に興味を持ってもらうことで、「たくさん面接をしてもなかなか内定を出せる人がいない」「説明会を開いても応募が期待通りに集まらない」などの課題を解決できます。
採用のミスマッチによる早期退職も防げるので無駄を省くことができ、時間・費用のコスト削減につながります。
代表的な採用マーケティングの方法
採用マーケティングではオンラインとオフラインの方法を活用します。広告出稿や費用をかけずに自社で採用施策を行う方法などさまざまです。採用マーケティングで活用できる代表的な方法をご紹介します。
ペイドメディア(Paid media)
ペイドメディアとは企業が費用を支払い広告を掲載するメディアです。
テレビ・新聞・雑誌などのオフライン媒体を活用する方法をはじめ、Wantedly・Indeedなどの求人メディアやデジタル広告といったオンライン媒体を活用する方法があります。
ペイドメディアのメリットは、費用をかけることで自社ではリーチできない人に広くアプローチできることです。
関連:求人検索エンジンIndeedの求人掲載について元運用担当者が解説~有料掲載編~
オウンドメディア(Owned media)
オウンドメディアとは自社が所有するメディアのことで、自社の採用ページやブログが該当します。
発信内容やタイミングの自由度が高く思い通りの発信ができるメリットがある一方で、多くの人にアプローチできるようになるまでオウンドメディアを育てるのに時間がかかるデメリットがあります。
オウンドメディアの採用ページがインターネット検索で上位表示されるためにはSEO対策が必要です。
SEOについてはこちらの記事を参考にしてください。
関連:【初心者向け】SEO対策とは?自分でできる対策方法やポイントを解説
アーンドメディア(Earned media)
アーンドメディアとは第三者が情報発信するメディアのことです。
以下のような例が該当します。
- ・自社の斬新な福利厚生がSNSで話題になる
- ・退職者が自社についてポジティブなレビューを残す
- ・採用イベントが就活コミュニティで口コミとして広がる
メリットは第三者が発信するため信頼性の高い情報として求職者に重視されやすいこと、SNSなどで拡散されやすいことの2つです。
一方で情報のコントロールができないため、ネガティブな情報も拡散されうるデメリットがあります。
リファラル採用
自社の社員に紹介してもらう方法をリファラル採用と呼びます。アメリカでは広く取り入れられており、日本でも徐々に取り入れられている採用方法です。
メリットは採用コストを削減できること、理想的な人材を採用できることの2つです。
事前に求める人材像を社員に伝えておくことで理想的な人を紹介してもらいやすくなります。
広告費用は発生しませんが、採用につながった場合に紹介してくれた社員にインセンティブを渡す例が見られます。
採用マーケティングの3ステップ
採用マーケティングにはたくさんの手法があるからこそ、なにから着手すればよいのかわからないという方もいるのではないでしょうか。
採用マーケティングに必要な3つのステップを紹介します。
STEP①:自社分析とペルソナ策定
採用市場のトレンドや競合にも目を向けながら自社分析を行い、強みと弱みを把握しましょう。
強みと弱みを把握することは採用活動ではとても大切です。弱みがわかれば採用すべき人材が明確になり、強みは候補者へのアピールポイントとなります。
自社分析に使えるフレームワークは以下の記事を参考にしてください。
関連:3C分析とは?マーケティングフレームワークで顧客・競合・自社を分析しよう
関連:SWOT分析とは?マーケティングフレームワークで事業課題や市場機会を見つけよう
強みと弱みを把握した上で、自社に必要な人材の要件定義を行いましょう。
性別、年齢、趣味嗜好、考え方、スキル、今までの経験などを明確にし、特定の一人をイメージしペルソナを作ります。
STEP②:カスタマージャーニーの作成
カスタマージャーニーはペルソナが購買に至るまでの思考・行動・感情をファネルに合わせて可視化することを目的としたマーケティングフレームワークです。ペルソナに一致する求職者が自社を認知し入社するまでのフローを理解することで、適切なタイミングで適切な訴求ができます。
STEP③:採用施策の企画と実行
カスタマージャーニーを作成したら具体的な採用施策を企画し、実行に移しましょう。
想定したフローの中でペルソナの思考や感情に合わせたメッセージングや企画を準備します。
たとえば「仕事と家庭を両立したい」と考えている候補者に対して家庭を持つ社員の働き方を紹介するイベントを開催するなど、ペルソナに適した施策を行いましょう。施策ごとに振り返りを行いペルソナにはどのような訴求が響くのかノウハウをためると、長期的に活用できる施策となります。
採用マーケティングの施策事例
実際にどのような採用マーケティング施策が行われているのでしょうか。理想的な人材を採用するためにはさまざまな方法があります。
採用マーケティングの3つの事例をご紹介します。
LINE株式会社:オウンドメディア「On LINE」
LINE株式会社は「On LINE」という人事領域のオウンドメディアで、社員インタビューや事業紹介を行っています。
細かな仕事の内容や入社前にはなかなか見えてこない会社のカルチャーまで知ることができるため、求職者がLINE株式会社で働く姿をイメージしやすい内容となっています。
「On LINE」は読んで学びになるメディアであることも特徴の一つです。LINE株式会社に興味のある人だけでなくあらゆる人が働く上で参考にできる内容であるため、今後転職してくるかもしれない潜在層にアプローチすることもできます。
株式会社SmartHR:会社情報の公開とユニークなイベント「公開雑談」
クラウド人事労務サービスを提供する株式会社SmartHRは、あらゆる媒体で会社の情報を発信し候補者とのタッチポイントの形成を図りました。「SmartHR オープン社内報」と呼ばれるオウンドメディアではプロダクト文言のルールや人事制度の検討過程など、一般的には公開されない会社の方針・理念の理解につながる情報が発信されています。
SmartHR株式会社は「公開雑談」と呼ばれるユニークなイベントも開催しています。短期的な採用成果ではなく、将来入社するかもしれない人とタッチポイントを形成するという長期的な目的を持つ施策です。オウンドメディアやイベントなど複数の媒体を工夫してかけあわせることで1年間で約3,700名の母集団を形成しました。
合同会社DMM.com:リファラル採用
合同会社DMM.comは組織風土へのマッチ度が高いメンバーの採用効率を上げることを目的に、「リファラル50」という採用社員数の50%をリファラル採用にする指針を掲げています。
もともと存在していたリファラル採用制度の課題を洗い出し、運用体勢を整え、2019年には26%がリファラル採用で入社しています。年単位では目標の50%には到達していないものの、50%を超えている月や職種もあり、2018年のデータと比較するとリファラル採用による入社率が高くなりました。
まとめ:採用マーケティングで効率的な採用活動を
採用マーケティングでは自社のことを全く知らない人や自社に興味関心がない人などの潜在的な層にもアプローチできるため、従来の方法ではリーチできなかった多くの人に会社のことを知ってもらえます。ペルソナに響く訴求を行うことで会社とのマッチ度が高い人を効率的に採用でき、入社後の早期退職防止にもつながります。
採用の良し悪しは中長期的な経営状況にかかわるため、採用マーケティングは重要な戦略のひとつです。優秀な人材を確保するための参考にしてください。
当社は印刷とWebを組み合わせた集客に関するマーケティング支援を行っています。採用や集客などマーケティングについてお悩みの方は、お気軽にご相談ください
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